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25 2017

魚類館

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真夏の強すぎる光を避けて
湖の中へと続く螺旋階段を降りてゆく。
地上でなら、何日間ものあいだ
湖の中ならば、数時間ほどのこと。

目下に現れるのは、青い半透明のドーム。
ドームの中には、魚たちが泳いでいるのが見える。
魚類館だ。

真夏でも、魚類館の中へは太陽の光は届かない。
水槽越しの青い光が、天井に波のように揺らめくばかり。
古代魚たちは、水音一つさせず優雅にターンをする。

水槽にいるのは、
もういなくなってしまったとされている魚たち。貝や水藻たち。
湖の底では、水の流れも時の流れもとても遅い。
だから彼らも生きていられるんだという。

青い大水槽の側のシルエットは、館長の青年だろう。
側へ歩いて行くと、こちらを振り向いた。
手を振ってくる。指の間にある水かきが、水色に透けている。
私も手を振り返す。私の水かきも水色に透ける。

半分だけ魚の人間は、
もうずいぶん前に皆いなくなってしまったから
私と館長はこうして魚類館にいられる。
もっと魚に近づいたら、私ももう地上へは戻れなくなる。館長のように。

館長は前よりもうるみを増して青くなったような目をして、話す。
「湖の底だって、いつまでも時が追いつかないわけでは、ないのです。
いつか時に追いつかれる時は、必ずきます。
けれどもそれまでは、ここはこんなに静かです。」

館長は、私に手を広げるようにしめすと
手のひらの中に小さな紙のようなものを握らせた。
手を広げると、それは青くて透き通った、薄いセロファンのチケットだった。
Gyoruikan、と印字してある。
「館長のあかしです。
僕はもうすぐ魚になってしまう。」
館長の指は、そっと私の水かきを撫でた。

それから私は、地上へ戻ることはなかった。
いつか、館長は立派な古代魚の姿になった。
大水槽を悠々と泳いで行った彼を、見失わないようにと目を凝らしたが
いつしかどの魚が館長か、わからなくなってしまった。
私はいつまでも、大水槽から目を離せずにいた。



…Henning Schmiedt 「Weite Wiese」
23 2017

新しい花

毎日、違う国の違う人になって、目覚めてみたい。
少女でも、老人でもいい。
そうして初めて会う人に、ずっと昔からの知り合いのように朝の挨拶をしたい。
毎日、新しい花の名前を知りたい。
オルゴールの短い曲が終わるように1日はあっというまで
おやすみなさいとさようならを唱えベッドに着く。
何もかもを忘れて目が覚めて、
けれども、鞄の中のノートに描かれた花の絵は少しづつ増えてゆく。
明日違う国の違う人で目覚めても
明日の私はそのことを知らないならいいな。
07 2017

夜のお話

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耳を澄ませてごらん。
きみがベッドについて目を瞑る時刻、亡霊たちが柔らかなローブをひきずる音が聞こえてくるよ。
夜の街は、亡霊たちでいっぱいだ。
町中の路地という路地を歩きまわっているんだ。
おや、怖がっているの。
亡霊の中には、きみと友達になりたい子供もいるのに。
あれ、毛布の中にかくれてしまった。
なにもこわがることなんかないのに。
おじさんのお話をきいたら、亡霊なんてこわくはなくなるよ。
ほら、毛布から耳だけだしてあげよう。
これならへいきだろう。
おはなしの、はじまりはじまり。
10 2017

うちうじんさん へ

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うちうじんさん へ


うちうじんさん、こんにちは。
あなたはにんじんきらいなのでしょう。ぼくもです。

むかし、てれびでうちうじんさんのことを
みたときは、とてもこわかった。
きみはぎんいろで、ひとにきんぞくをうめこんだりする
おっかないいきものでした。
でもほんとうの、うちうじんさんは
ふあふあで、やさしいしずかないきものでしたね。

でも。
あなたは、ほかのひとからみたら、
ふつうのにんげんのすがたにみえるのですね。
ぼくには、あなたはふあふあのしろいけにおおわれたすがたにみえます。
ほんとうに、そうです。
どうか、ぼくがほかのひととはちがうことをしんじてください。

うちうじんさん、あなたには
ぼくはどんなふうにみえますか。
ひとのすがたに、みえますか。
でもぼくは、
ぼくも、
うちうじんだったのです。
ぼくは、おおきくなってから
それをしりました。

ぼくは、がっこうのおくじょうでだけ
ほんとうのすがたにもどります。
ぼくのすがたは
ひとでいるときよりも
みにくいかもうつくしいかもしれません。
おなじうちうじんでも、あなたのようなうつくしいうちうじんかはわかりません。

あなたはいつか、こきょうのほしを
みつけられたらいいですね。
きっとあなたのように、しろくてうつくしいほしだとおもいます。

ぼくは、よくおくじょうにいます。
よかったら、ほうかごおはなししたいです。


U
より
05 2017

ふらんけん

昔むかしきみ白いけものだった頃 ぼくはまだ生まれてなくて

カーテンは風の形を教えてくれる 春に触れれば春を知り

夕暮れに捨てられた猫 いつの日か優しい少女に生まれるでしょう

夕ぐれゆらゆら幽霊達が 揺らすよゆりかごゆううつなゆめ

ふらんけん きらわれもののきみがすきやさしいうたをうたってあげる

すこしづづはなれていったいつからがさよならなのかわからないまま

しぃっ静かにおしいれの戸を閉めて 瞼閉じれば世界はひとつ

もうみんな忘れてしまったことばかり 空に明日も昨日もない



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