屋根裏の羊

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魚類館

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真夏の強すぎる光を避けて湖の中へと続く螺旋階段を降りてゆく。地上でなら、何日間ものあいだ湖の中ならば、数時間ほどのこと。目下に現れるのは、青い半透明のドーム。ドームの中には、魚たちが泳いでいるのが見える。魚類館だ。真夏でも、魚類館の中へは太陽の光は届かない。水槽越しの青い光が、天井に波のように揺らめくばかり。古代魚たちは、水音一つさせず優雅にターンをする。水槽にいるのは、もういなくなってしまったと...

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夜のお話

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耳を澄ませてごらん。きみがベッドについて目を瞑る時刻、亡霊たちが柔らかなローブをひきずる音が聞こえてくるよ。夜の街は、亡霊たちでいっぱいだ。町中の路地という路地を歩きまわっているんだ。おや、怖がっているの。亡霊の中には、きみと友達になりたい子供もいるのに。あれ、毛布の中にかくれてしまった。なにもこわがることなんかないのに。おじさんのお話をきいたら、亡霊なんてこわくはなくなるよ。ほら、毛布から耳だけ...

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うちうじんさん へ

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うちうじんさん へうちうじんさん、こんにちは。あなたはにんじんきらいなのでしょう。ぼくもです。むかし、てれびでうちうじんさんのことをみたときは、とてもこわかった。きみはぎんいろで、ひとにきんぞくをうめこんだりするおっかないいきものでした。でもほんとうの、うちうじんさんはふあふあで、やさしいしずかないきものでしたね。でも。あなたは、ほかのひとからみたら、ふつうのにんげんのすがたにみえるのですね。ぼく...

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透明人間たち

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午前中の人のまばらなカフェには透明人間たちがいる。透明人間たちは、ひとびとの間、時間の間にたゆたっていて、皆とても大人しい。透明人間たちは、彼らが強く身体があることを感じた過去のある瞬間に、身体を忘れてきてしまっている。夕立の中を思い切り速く走った瞬間。子供の頃に抱きしめられた瞬間。恋人に頬をはたかれた瞬間。その瞬間の感覚は今も透明人間たちに響きつづけていて、彼らの目はそのときを見続けている。透明...

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紅白園

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えー、つぎの檻、それは、人間になろうとしてなれなかったものです。はい、床に広がっている白と赤のどろどろしているそれです。そいつは、かつては幼児ぐらいの大きさと形でした。昔は、言葉を教えていた時期もあったのですよ。人の言う通りに言葉を反復しようとしたりよく世話をしてくれる研究者のあとをつけたりもしていました。顔は白くて、棒でついたような二つの小さな穴が空いているだけでしたけどなんとなくけなげな様子で...

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