屋根裏の羊

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category: 物語  1/6

ユキハルさんと栞

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ほんとうに、ユキハルさんの一番の宝物は、ただの黄色い栞の紐だったのです。絵本の中のトラのように、少し橙がかった黄色でした。僕がいつもの喫茶店でユキハルさんを見かける時、たいていユキハルさんはその黄色の栞を愛でていました。人さし指と親指で、栞の根元から先までをするするとなぞりそれを幾度も幾度も繰り返しています。栞は全体が細かく毛羽立っていて、先の方はクジラのしっぽのように二手に割れてしまっていました...

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触覚記

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ニンゲンでないものになれた子の頭からは桃色の触覚がはえて、虫の気持ちがわかるようになる。青天使はそう言ったのだった。3ヶ月間部屋に閉じ込められていたフユは、深夜、こっそり布団を抜け出し、ベランダへ出た。母親が眠っている間だけは、ベランダへ出れた。外の空気を吸うのは久しぶりで、フユは冷たい外気に少しむせた。ベランダから、棟の屋上に青いものがみえた。人だった。しかしそれは、絵本に出てきた天使によく似た...

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いまむらくんはうちゅうじん

いまむらくんは、みんなとちがいます。いまむらくんは、みんなと手のかずもかおの形もちがいます。からだの色もちがいます。とおいほしから来たんだそうです。はじめていまむらくんが教室に来た日、いまむらくんは、黒ばんの前で先生にじこしょうかいするよう、いわれました。でもいまむらくんには、口のような小さな穴がふたつあるだけで、ことばがはなせないみたいでした。口のような小さな穴から、ふすふすと音がしただけで、そ...

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リリとカラス

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その日の朝、リリがスクールバスに乗ると、いつも座っている一番後ろの席が空いていなかった。ヘアアクセサリーをたくさんつけたブロンドの女の子たちが座っていたから、リリは前の方の席へ座った。やがて、何個めかの駅で、あまりにも太っていることで有名な男の子が乗ってきた。後ろで、はやし立てるような声や口笛が鳴る。男の子は、なにも言わないで座っているみたいだ。リリには、だんだんはやし立てる声や口笛が増えてくるよ...

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コココ

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二年生(きみの手にふれると、いたいなあ。)コココはほろりと涙をこぼした。コココは、とてもからだがもろいので、何かに触れるだけでいたいんだ。ぼくはコココから離れた。一しゅんだけ、コココはさみしそうな顔をした。一しゅんだったから、ぼくは見なかったフリ、した。(ぼく、かえるよ。)なんだかこわくなったから。(うん。)コココはゆっくりと、口元をにっこりさせた。そのしぐさは、あまりにゆっくりな笑顔だったからぼ...

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